近鉄百貨店奈良店5階の東急ハンズ一画にある「奈良に良し」売り場が10月より拡張され、「奈良の暮らしに良いものあります。奈良の暮らしの良いものあります」というコンセプトで、奈良に関連する企業の、暮らしの産品・工芸品 地元食品などを週替わりのポップアップを行いながら以前より強力に打ち出す売り場となりました。
この、新生「奈良に良し」売り場で、11月30日~12月7日の一週間、KOTOKAのポップアップが開催されました。
KOTOKAが、奈良の靴メーカー7社が共同で開発、製造する「新しい奈良の革靴」として発売されて約2年半経ちます。今まで各地でポップアップを行う機会がありましたが、一番多く行っているのは、やはり奈良県内。中でも今回は、奈良を代表する百貨店での開催となり、ブランドとして認められてきたことを感じます。
国内最大の革靴産地である東京、浅草エリアに比べると規模は小さいものの、奈良は7社の革靴メーカーが集まる、日本有数の革靴産地と言えます。しかしながら、靴下などのアイテムに比べて、その知名度は低く、地元の方でも奈良で革靴がつくられていることをご存知の方は僅かでした。
KOTOKAを開発する時には、そんな課題も踏まえて、奈良らしい革靴、奈良の方が誇りに思っていただけるような革靴をつくれないものか、7社で頭を悩ませたものです。
洋装と共に西洋から輸入された革靴は、欧米がその本場とされてきました。日本の革靴作りも、常に欧米の靴を研究し、そのつくりを模倣することから始められました。真摯で緻密な日本のものづくり気質により、今では品質において欧米に勝るとも劣らない日本の革靴ですが、やはり欧米の文化や歴史に基づくもの。
そんな革靴に、古都、奈良らしい、古来より伝わる日本の価値観や美意識を込めることはできないだろうか。これが KOTOKA が目指したことでした。
そこで、私たちの周りにあるものに、日本独自の価値観や美意識がどのように込められているかを考えました。まず思い当たったのは、意外にも食べ物や住まいです。素材を厳選し、その持ち味を生かす日本料理。シンプルで、時に海外からミニマリズムなどとも言われる日本の建築やその装飾。これらは「わびさび」の「わび」に当たるものでもあります。これを靴に置き換え、通常使われるライニング(裏張り)を用いずに、厚手ながら柔らかな革一枚のアッパー(革製の靴本体)と革パーツの縫い合わせを最小限に留めるデザインを採用することにしました。形崩れを避けるために、また革を効率的に使用するために、靴メーカーの多くが避けてきたことを敢えて取り入れました。
それから、奈良にある古寺の、長い時を経て初めて得られる奥深い味わい。こちらは「わびさび」の「さび」に相当するもの。履いて革にシワやキズが入っても、それらが味わいとなるような革を選ぶことにしました。日本産の革の中でも、革肌をキレイに、均一にするための加工などがされていない自然な肌の革です。個性が強かったり、一足ごとに表情の違いが出たりするために、靴にはあまり使われていない革を選びました。
こうしてつくられた KOTOKA には、従来の革靴にはあまりないくらい、柔らかな履き心地となりました。「一枚がやさしく足を包む」ような感覚です。履くことで生まれる風合いも、ご覧の通り豊かで奥深いものとなました。
近鉄百貨店奈良店の「奈良に良し」売り場でのポップアップでも、KOTOKA のこうした特徴が、地元の方に認められてきたのを感じることができました。
革の自然な風合いから来る個体差も好意的に受け止めてくださる方や、経年変化を楽しみに靴を選ぶ方が増えてきているのも感じました。日本の革文化も成熟期を迎えているのかも知れません。
何より、奈良でつくられる靴への地元の方の暖かい想いを感じることができ、近鉄百貨店さんから来年も開催したいとのお話をいただけたのは、嬉しいことでした。
地元、奈良でのこうしたイベント、今後もぜひ継続していきたいと思っております。