奈良発靴ジャーナル

2021/02/19
知られざる
ヒールアップシューズの魅力
インタビュー
北嶋製靴工業所
知られざる<br>ヒールアップシューズの魅力
知られざる
ヒールアップシューズの魅力

驚くほど快適な履き心地で
好印象をもたらす革靴。

ヒールアップシューズという靴をご存じでしょうか。端的に言えば“身長を高く見せられる靴”のこと。数センチ背丈が高く見えると、印象がずいぶん変わるものです。履くだけで自らをスラリと好印象に演出できるのがヒールアップシューズなのです。

かつては背の低い人向けの靴と思われていた、このヒールアップシューズ。現在ではユーザー層は幅広く、平均以上の身長の方や背の高い方も多いようです。

ただ「見た目が不自然」「足が疲れる」などとネガティブな印象を持っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし今回ご紹介する北嶋製靴工業所がつくるヒールアップシューズは、ドレスシューズとして着用しても洒脱で、容易にスタイルアップが叶う一足なのです。

上の⾰靴のイラストをご覧ください、外⾒はごく普通の短靴ですが、内側に秘密があります。中底のかかと部分に厚みを持たせた“インヒール”を⼊れることで、その分⾜のカカト位置が上がります。靴底のヒールに加え、インヒールの⾼さの分だけ⾝⻑を⾼く⾒せることができるのがヒールアップシューズなのです。

単純にかかとを高くするだけでは足が疲れやすくなりますが、北嶋製靴工業所のインヒールは独自の形状にクッション性の高い素材を組み合わせてこの問題を解決しています。また、着用時の身長は、7㎝アップまで、と北嶋製靴工業所では決めています。その理由は、7cm以上に高くなると不自然に見えるだけなく、足の健康を損なう恐れがあるため。革靴としての美しさを損なわず、履き心地とファッションを楽しめる一足として考えているのです。

履き心地に大きな違いが生まれる
オリジナルの木型。

前述のとおり、ヒールアップシューズは靴の内側に入れたインヒールで足のカカト位置を上げる構造です。多くのヒールアップシューズは、通常の靴にこのインヒールを入れているため、靴の内側の空間、特にカカト部分の形状が変わってしまいます。このようなつくりでは、足のカカトをホールドするための靴のカカトの形が生かされず、脱げやすかったり、甲の部分が痛くなってしまったり、と快適に履くことはできません。

そのデメリットを解消するため、北嶋製靴工業所では何十年も前から、自社でヒールアップシューズ専用の木型を開発しています。インヒールを入れた時のカカト位置を考慮して、履きやすさを追求した木型です。お客様の声を聞きながら、改良を重ねられたその木型。現在では、様々なスタイルに加えてインヒールの高さごとに細分化され、多くの種類を使い分けています。フィット感と快適さで高い評価を得ている北嶋製靴工業所のヒールアップシューズ。長い経験に基づいた、他社には真似できないこの専用木型が要なのです。

もちろん、アッパーには本革を使っています。価格で勝負するために合皮が使われることの多いヒールアップシューズ業界で、あくまで本格的な革靴としての素材とつくりを守りたい。日本有数の革靴産地である奈良のメーカーだからこそ、のこだわりです。

ヒールアップシューズを履くことは
決して特別なことではない。

では、ヒールアップシューズはどのような場面で着用されているのでしょうか。典型的なのは、結婚式での着用。一生に一度のハレの日を、華やかにしてくれる一助となってくれます。でも、こうした特別な時だけではありません。弁護士や政治家、エグゼクティブ、有名人の愛用も多いそうです。ほんの少しスタイルが良いだけで好印象になり、政治やビジネスが上手くいく可能性が高まるとか。何より、履く本人の自信が高まるのがその理由かもしれません。ヒールアップシューズは、背の高さに関係なく、普段の私たちの気持ちを高めてくれる、不思議な力を持った靴ではないでしょうか。

改めて考えると、ハイヒールが女性に愛されるのも、背を高く見せるのが第一ではない気がします。自分の気持ちを高めて、上品で魅力的な自分自身を演出する。その手助けをしてくれるから、ではないでしょうか。ヒールアップシューズも同じです。きっと気持ちも前向きになるはず。ぜひ一度試してみてください。

新たなことへの挑戦心で
こだわりの靴づくりを続ける

1961年に創業した北嶋製靴工業所は、ヒールアップシューズづくりのリーディングカンパニーとして、靴業界では知る人ぞ知る老舗。はじめは、身長が低くてもスタイルをよく見せたい、という創業者の何気ない思いがきっかけだったそうです。ただヒールアップシューズは構造が特殊ゆえに、当時はモデルとする革靴がほとんどなかったとか。加えて靴づくりで使うミシン類にもヒールアップシューズのカカト形状に対応する特殊な加工が必要でした。それだけに、この靴づくりを続けられるのか、と迷いを持つこともあったそうです。しかし、同じ悩みを持つ人の力になりたい、その一心で靴づくりに邁進してきました。

大切にしているのは、その人にとってなくてはならない一足であること。そのためにさまざまな工夫をしてきました。これにはお客様の声を聞くことが一番。北嶋製靴工業所では、販売店さんを通してでも 、または直接でも、実際に靴を履いているお客様の話を聞くことをとても大切にしています。デザイン、フィット、履き心地、経年変化、など、様々な意見を聞き、それを靴づくりに反映させ、着実に製品を改良してきました。

お客様の声に叱咤激励され、北嶋製靴工業所の技術力は今日まで磨きあげられてきたのです。今では業界でも指折りの高い技術力が噂を呼び、難しい靴の製作の相談が飛び込んでくることも多いのだとか。ただの技術ではなく、お客様との交流から生み出された技術だからこそ信頼されているのではないでしょうか。

奈良・大和郡山に息づく
日本の靴づくり。

奈良・大和郡山に息づく 日本の靴づくり。-画像01

北嶋製靴のある奈良県大和郡山市は、靴づくりで栄えてきた街。「子どもの頃はミシンや裁断機、ハンマーの音を聞きながら登校していました。そんな歴史あるこの場所での靴づくりにこだわり、次の世代にも伝えていきたい」と代表の北嶋さん。

同じ思いを持つ奈良の革靴メーカーが集まって、奈良が日本有数の革靴産地であることや、そこでの靴づくりを発信するプロジェクトが動き出している。北嶋さんも主要メンバーのひとりである、そのプロジェクトからは、日本の感性を生かしてつくった、新しい奈良の革靴「KOTOKA」が生まれている。

北嶋さんはこれからも、日本人らしい美意識や実直さを大切にし、丁寧な靴づくりを続けて、奈良の靴づくりを盛り立てていってくれることに違いありません。

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