奈良発靴ジャーナル

2022/03/30
Oriental – 日本を代表するドレス靴を目指して
Oriental – 日本を代表するドレス靴を目指して
Oriental – 日本を代表するドレス靴を目指して

日本には数多くの靴メーカー(靴工場)があります。しかし、その大半は大手販売業へのOEM製造を主としたり、自社で所有する商標を冠した製品でも、特定の販売チャネルのみで販売されるものであったり、と消費者が認知している靴のブランドがそのブランドを所有するメーカーの自社工場で製造されるケースは意外と少ないのです。

 

つくり手と売り手が分かれ、つくり手が「ものづくり」に専念してきたことが、メイドインジャパンが品質へのこだわりを保ってきた要因のひとつでもあります。しかし、このビジネスモデルでは、環境の変化でメーカーに製造を依頼する売り手が縮小し、また販売するものを変えた場合、つくり手にはその状況を変える術がありません。

 

 

大手メーカーでなくとも、自社ブランド、つまりファクトリーブランドを開発して育て、ユーザーから求めてもらえるようにする。自社の運命を自らの手でコントロールするひとつの手法として注目するメーカーは多いものの、ものづくりとは大きく違うブランド育成のノウハウを獲得するのは容易ではありません。

 

奈良の靴工場の中でも、いち早く、自社ブランドの育成に取り組み、その成果をあげているメーカーがオリエンタルシューズです。1947年の創立以来、創業者の志に沿って人々の足元を支えるための実用的な靴を広く製造してきた会社です。現在では、多様な消費者のニーズに応えるための、違った個性を持つブランドをいくつも立ち上げ、視野を広げて異業種と交流しながらブランド育成のスキルに磨きをかけています。

 

中でも自社の名前を冠した、社を代表するブランドの「Oriental」は、紳士靴メーカーとして培ってきた技術を生かした、高級ドレス靴ブランドです。伝統的な製法でつくられ、美しいフォルムを持ち、多くのユーザーの足にしっかりとフィットする。そんな高い評価を、革靴好きのユーザーから得ています。

 

 

オリエンタルシューズは「Oriental」という商標を古くから持ち、比較的低価格な靴などにも使っていました。 2016年、創業者の孫にあたる松本英智氏が、百貨店での勤務を経てオリエンタルシューズに入社し、自社ブランドの育成の手始めとして、Oriental を社のフラッグシップブランドと再定義しました。

 

実用的なビジネス靴も、現在より高価で、より手間をかけてつくられていた時代に、自社工場で、主流の製法として用いられていたグッドイヤーウエルト製法による本格的な紳士靴。国内外を問わずベストな素材を用い、伝統に基づく品格あるデザインを採用する。Oriental と刻印する上で譲ってはならない線を引いたのです。

 

 

欧米の、また日本の一流老舗ブランドにより守られてきた、しかしオリエンタルシューズでは過去のものとなりつつあった、伝統的製法によるドレス靴と呼ばれる本格的紳士靴を、再び会社の旗艦とし、企業イメージも向上させる。長期的な目標です。

 

以来、製品の品質を常に高めるための努力を続けながら、少しずつその評価を築いてきました。現在では、ハンドソーンウエルト製法という注文靴、手づくり靴に用いられる熟練の職人技でアッパー(革製の靴本体)と革の中底を手で縫い合わせる製法のトップグレードのラインを加え、日本が世界に誇れる靴づくりを形にしています。

 

 

嗜好性の高いドレス靴ユーザーのツボを抑えるべく、希少なレザーを使った製品を採用することも増えてきました。

 

履き心地の改善も続けています。人それぞれに異なる足の形を考慮して木型のバリエーションを増やしたり、日本人の足に顕著になってきた、薄め足により良くフィットする木型の開発をしたり、ユーザーの満足度を高めるためには、変えるべき部分を潔く変えているのです。

 

 

ユーザーの体験がブランドの評価を高めることを考えると、変えることを恐れて改善をためらうべきではない。松本氏の考えは、はっきりしています。

 

販路に関するアプローチも、2016年当初のブランドを再定義した直後と現在では変化があります。当初、製品の良さをしっかりと伝えてくれるお店で、それをわかってくださるお客様にのみ売れば良い、と絞り込んでいた販路を、積極的に拡大しているのです。

 

販売に関しては、ユーザーと直に対話し、フィッティングをしながら販売することのできる、トランクショーというイベントスタイルの販売方法を強化しています。靴専門店や靴磨き店など、革靴好きが集まる店舗に出向いて、お店の協力の下で一時的に販売会、受注会を行う方法です。

 

 

トランクショーでは、ひとりひとりのユーザーと対面し、フィッティング、つまり試し履きでのフィット確認をしながら販売しますが、この時に聞くことができるユーザーの声には、より良い靴をつくるための最善の情報が詰まっています。

 

自社工場で、デザイン、製造、販促、販売までを全て行うメーカーだからこそできる、ファクトリーセールも定期的に実施しています。着用には差し支えなくとも小さな傷が入っているなど、いわゆるセカンド品や、型落ちのモデルを、セール価格で買える、この機会を楽しみにしてくださっているお客様もいらっしゃいます。

 

 

倉庫に溜まってしまいがちな在庫をファクトリーセールで減らすことは、ブランドを先に進めるのにも役立ちます。

 

こうして、着実に評価を高め、ファンを増やしている Oriental。今では海外からも引き合いが増え始めています。本来、オリエンタルシューズが持っていた潜在的な力を遺憾なく引き出し、会社の知名度や評価を高める役割をも果たす、名実ともにフラッグシップブランドと呼べる存在に成長してきています。

 

 

男性的なドレス靴を好む女性も増えてきた状況に応えるべく、ウィメンズ ラインを投入したり、裸足でも履けるソフトなレザーを使ったり、ライニングのない一枚革でつくったりするモデルを発売したり、と、成長によってアイデンティティの固まったブランドを拡大する段階にも入りました。

 

靴でも、衣類など他のファッション製品でも、ファクトリーブランドを立ち上げて自らつくったものをその手でユーザーに届ける販売方法を志向する製造業者は数多く存在します。Oriental ブランドの順調な成長は、そうした方々にとっての希望となるのではないでしょうか。

 

 

オリエンタルシューズ 株式会社

〒639-1042 奈良県大和郡山市小泉町2475-2

Tel : 0743-55-1111

E-mail : info@oriental-shoes.co.jp

 

コーポレートサイト            https://www.oriental-shoes.co.jp/

Oriental ブランドページ   https://www.oriental-shoes.co.jp/brand/oriental/

Oriental ウェブストア        https://oriental-shoemaker.com/

インスタグラム                   https://www.instagram.com/oriental_shoemaker/

 

 

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