奈良発靴ジャーナル

2025/03/13
経年変化が面白い「茶芯」ブラックレザーのKOTOKA
経年変化が面白い「茶芯」ブラックレザーのKOTOKA
経年変化が面白い「茶芯」ブラックレザーのKOTOKA

デニム好きの方には、穿くほどに色落ちするその風合いを楽しむ方が多いようです。こだわりを込めてモノづくりをするデニムのブランドも、穿き込んで色落ちした製品のサンプルを用意して、自社製品がどのような色落ちするか説明したりします。

靴をはじめとする革製品でも、経年変化を楽しむユーザーは年々増えているように感じます。KOTOKAのような厚手の革の靴の場合、履いていくうちに革に刻まれるシワや擦れ、傷さえも風合いとして楽しめます。色や陰影が変化する革では、さらに表情を変える経年変化が楽しめます。

そうした中で革靴好きのユーザーの間で人気が高まっているのが「茶芯」の黒い革です。現在、多くの黒い革は、革の芯まで黒く染められています。靴を履き込んだ時に、色合いの変化が起きやすい茶系の革の靴に比べて、経年変化の度合いが少ないのが普通です。しかし、黒い革の中でも「茶芯」と呼ばれる、革の芯や下地の色が茶色いものは、履き込むことで表面の黒い色が剥げたり褪せたりすることで、黒い色の下から茶色い色がのぞき、面白い経年変化を見せてくれます。

KOTOKAでは以前より、一部商品(靴 1型、サンダル1型)にのみ「茶芯」のブラックレザーを使っていましたが、この2月に、新たに「茶芯」の黒い革を使った2型の靴を発売しました。それぞれが、異なった革ですが、どれも、兵庫県たつの市のタンナーさんに、KOTOKAのために開発していただいた革です。今回は、そうした「ブラック茶芯」のKOTOKAの靴をご紹介します。

 

一枚革ダービー ブラック茶芯  メンズ(KTO-2002) レディース(KTO-2002L)

今までは、この「一枚革ダービー」が KOTOKAの靴(サンダルを除く)では唯一の「ブラック茶芯」の革のものでした。靴本体の革をソールに当たるところで外側に広げて、その上を走るステッチでソールに縫い付ける、ステッチダウン製法でつくられています。この製法の靴ならではのソールの張り出しが、力強くてカジュアルなイメージの靴にしており、デニムやワークウェアなどドレスダウンしたスタイルによく合う靴として人気のモデルです。外羽根スタイルの外観を、つま先からカカトまで続く一枚革でつくっています。

【新品の時】

 

【履いて経年変化した靴】

この靴の革「たつのハンドワックスレザー」は、植物タンニンでなめした厚さ3mmという極厚手の革にオイルを入れ、染料で丘染め(革の表面に染料を吹き付ける等して染める方法)し、熱で溶かしたワックスを革に擦り込んだ後、大型のハンドアイロンを使って革の銀層(革の表面の薄く硬い層)にしっかりと染み込ませます。このワックス仕上げの工程は全て手作業となり、革一枚につき数十分かかります。通常の革では考えられないほどの手間をかけて仕上げられているのです。

黒い革をしっかり黒く仕上げるには、通常は染料のみでなく顔料も使用します。染料は溶剤に溶け込み革の繊維に染み込み、元々の下地(革)の色が透けて見えますが、顔料は色素の粒子が大きいため革の表面に色を載せることができ、革の下地の色を隠蔽できるのです。この革は染料のみで染めているものの、仕上げに擦り込むワックスが色を深めるため、真っ黒な革色となります。また、ワックスが効いたしっとりとした肌を持つ革に仕上がります。

この靴を履き込むと、まずは革が大きく曲がって山となった部分、アタリやスレの部分から茶芯が見え始め、次第にその周囲の黒色も薄くなって、広い範囲で茶芯が見えてきます。染料の黒い色が少しずつ革の中に吸い込まれていくように、「面で出る」茶芯と言えるでしょう。手作業で仕上げた革だけが持つ、自然な風合いの茶芯が楽しめます。

一枚革ダービー ブラック茶芯

メンズ         https://nara-shoes.jp/kotoka/kto-2002-01/

レディース https://nara-shoes.jp/kotoka/kto-2002l-01/

 

 

飛鳥ホールカット ブラック茶芯  メンズ(KTO-4006)

この「飛鳥ホールカット」従来は、栃木レザーのダークブラウンとナチュラルの2色展開でしたが、この2月末に「ブラック茶芯」が加わりました。ホールカットとは、つま先からカカトまで縫い合わせなく続く一枚革でつくられた靴のこと。主にドレス靴で使われる用語です。靴の内側からソールを縫い付ける、マッケイ製法でつくられています。マッケイ製法でつくられる靴は、張り出しの少ない薄目のレザーのソールが付けられることが多いのですが、飛鳥ホールカットは、張り出しの大きい厚めのレザー(ベース)のソールをくみあせて、堅牢なイメージに仕上がっています。

【新品の時】

【履いて経年変化した靴】

この靴の革は、「たつの丘染めオイルヌメ」ハンドワックスレザー」という革。靴用の革としては極厚手の、厚さ3mmという植物タンニンでなめした革(ヌメ革)がこの革のベースです。それにオイルを入れ柔軟にした後、その銀面(革の表面)を軽く擦ることで滑らかにした上で、銀面のみを染める「丘染め」という方法で黒く染められます。まず染料で下染めし、その後で顔料で仕上げることで、漆黒の滑らかな革肌となっています。

この靴を履き込むと、まず滑らかな革肌にシワが刻まれ、これが靴の表情を大きく変えます。敢えて人に例えると、無口でどこか気取った感じが、靴を履くことで革がうねり、その谷間に細かなシワが刻まれることで、雄弁で表情豊かに、変わっていくようです。更に履き続けるとアタリやスレの部分から茶芯が見え、長年履くと、漆黒の革肌に色の濃淡が生まれます。愛用した年月がその目でわかる経年変化が楽しめます。厚さのある革ですが、もちもちとした弾力性を感じ、早い段階で足に馴染みます。

飛鳥ホールカット ブラック茶芯 メンズ

https://nara-shoes.jp/kotoka/kto-4006-01/

 

一枚革ハイカット ブラック茶芯  メンズ(KTO-4007)

新たなデザインの KOTOKA として、くるぶし丈のハイカットの靴を、つま先からカカトまで縫い合わせなく続く一枚の柔らかな革でつくりました。履き心地も驚くほど柔らか。セメント製法で軽快に仕上がっており、つま先近くまで配した靴紐をしっかり締めると、足に吸い付くようなフィットを味わえます。

【新品の時】

【履いて経年変化した靴】

この靴は「たつのナチュラルグレイン」という革を使っています。厚さ2.5mmとかなり厚い革ですが、しっかりと揉まれることで非常に柔らかく仕上がっています。革肌一面に細かなシボ(凹凸模様)があるのも、この革の特徴です。型押しでシボを入れる革はよくありますが、この革のシボは揉み工程で自然に生じたもの。シボ模様は完全に均一ではありませんが、だからこそ自然な印象です。顔料を使わず染料のみで丘染めしてあるのもこの革の特徴です。染料のみでは顔料ほど強い黒さにならず、明るい外光の下では革下地の茶色がわずかに透けてダークブラウンに見えることもありますが、それがこの靴の柔らかなキャラクターにつながっています。

この靴を履いてまず感じるのは、革靴とは思えないほどの柔らかさです。目をつぶって履くとスニーカーを履いているのかと勘違いするくらいです。軽くできており、軽快に歩ける点でもスニーカーのような履き味と言えるでしょう。革は元からとても柔らかく、一面にシボも入っているので、履いてもシワは目立ちません。それでも履き込むと波打つようなうねりが生まれて、更に柔らかな表情とになります。染料のみで染めた革は、屈曲する部分やアタリが出たところのシボの頭から色が薄くなり茶芯が透けて見えます。更に履き込むと、面で出る茶芯が色の陰影となり、味わい深く経年変化するはずです。

一枚革ハイカット ブラック茶芯 メンズ

https://nara-shoes.jp/kotoka/kto-4007-01/

 

KOTOKA の3種類の「茶芯」のブラックレザーの靴。靴の個性と革の個性が相まって、それぞれが特徴ある風合いを持ち、それぞれの経年変化が楽しめる靴です。これらの靴を長く履いていただいて、履く方それぞれの歴史を表す経年変化を楽しんでいただければ嬉しいです。

 

 

 

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